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No.192 July.28, 2022
 
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大興安嶺
 
目 録
ニュース
第23回中国専利賞の受賞者名簿が発表
第1回WIPOグローバル・アワード発表、受賞企業数トップは中国
「2021年中国専利調査報告」を発表
注目判決
双飛人製薬股份有限公司と広州頼特斯商務諮詢有限公司らの商標権侵害および不正競争紛争事件
嘉興市中華化工有限責任公司、上海欣晨新技術有限公司と王龍集団有限公司らのノウハウ侵害紛争事件
「施耐徳」商標権侵害紛争事件
集佳の最新動向
集佳が代理人を務めた33件の専利が第23回中国専利賞を受賞 何年も連続で代理機関ランキングのトップに
集佳律師事務所「2020-2021中国優秀知的財産権代理機関ランキング」に選出
集佳がMIP「IP STARS 2022」で多くのランキングに選出
集佳が8年連続で「IAM Patent 1000」に選出ングに選出
集佳の視点
手順の一部と方法全体との一体不可分な関係による 複数主体方法特許権侵害の判断をめぐる問題の解決(三の一)
 
 
ニュース

 
第23回中国専利賞の受賞者名簿が発表

 

  先ごろ、中国国家知識産権局と世界知的所有権機関(WIPO)が共同実施する第23回中国専利賞の受賞者名簿が発表された。958件の専利が中国専利金賞、銀賞、優秀賞および中国意匠金賞、銀賞、優秀賞を受賞し、28機関が中国専利賞最優秀組織賞、優秀組織賞を受賞し、18名の院士が中国専利賞最優秀推薦賞を受賞した。

  発表によると、今回の中国専利賞の選考では、「ブチルフタリドシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体包接化合物、その調製方法および用途」などの30件の特許や実用新案が中国専利金賞に、「ガンマナイフ」などの10件の意匠が中国意匠金賞に選出された。また、「小児の消化不良・咳嗽を治療する漢方薬組成物およびその調製方法」などの60件の特許や実用新案が中国専利銀賞に、「中性子放射化多元素分析器」などの15件の意匠が中国意匠銀賞に、「有効部位における医薬品の沈積が改善される乾燥粉末組成物」などの791件の特許や実用新案が中国専利優秀賞に、「LEDガーデンライト(中国スタイル)」などの52件の意匠が中国意匠優秀賞に選出された。このほか、中国国家知識産権局は江蘇省知識産権局などの8機関に中国専利賞最優秀組織賞を、中国科学院科学技術促進発展局などの20機関に中国専利賞優秀組織賞を、また舒興田氏ら18名の院士に中国専利賞最優秀推薦賞を授与することを決定した。

  添付:国家知識産権局の第23回中国専利賞授与に関する決定

  (出典:中国知識産権報)

 
 
第1回WIPOグローバル・アワード発表、受賞企業数トップは中国

 

  世界知的所有権機関(WIPO)の公式サイトは7月19日、第1回WIPOグローバル・アワード授賞式がWIPO総会期間中に行われたことを伝えた。5社の企業が62か国の申込企業272社の中から頭角を現した優れた企業がトロフィーを受け取った。受賞企業はアルファベット順に、Hydraloop(オランダ)、Lucence(シンガポール)、Raycan(中国)、Shylon(中国)、Splink(日本)である。受賞企業の数では、中国が2席を独占し、第1回WIPOグローバル・アワードで受賞企業が最も多い国となった。

  (出典:中国国家知識産権局政務WeChat)

 
 
「2021年中国専利調査報告」を発表

 

  先ごろ、中国国家知識産権局は「2021年中国専利調査報告」を発表した。調査データによると、現段階において、中国専利の権利移転・実用化は活況を維持し、有効専利の産業化率は上昇を続け、産学研(企業・高等教育機関・研究機関)の協力・イノベーションは顕著な効果をあげ、中国国内の知的財産権保護環境は安定の中で改善がみられる。

  第一に、中国の有効専利の産業化率は安定の中で高まっている。2021年、中国専利の産業化率は35.4%で、前年比0.7ポイント上昇し、直近3年間は上昇傾向を示し、直近5年間は3割以上で安定している。イノベーションの主体である企業の有効専利産業化率は46.8%に達し、前年比1.9ポイント上昇した。企業規模を見ると、大・中・小規模企業の特許産業化率はそれぞれ47.1%、54.6%、47.7%であり、いずれも前年比でいくらか上昇している。

  第二に、産学研の協力は専利産業化水準の上昇を効果的に牽引している。調査によると、産学研専利のうち、高等教育機関が筆頭専利権者である専利の産業化率は22.8%に達し、高等教育機関の平均レベルの7倍以上となり、科学研究機関が筆頭特許権者である専利の産業化率は25.8%で、科学研究機関の平均水準を約10ポイント上回っている。さらにデータによると、産学研協力の専利産業化における平均収益は企業の平均水準を32.5%上回り、産学研協力の経済効果を高める作用は明らかである。

  第三に、中国の知的財産権保護環境は全体として改善している。2021年、中国企業が専利侵害後に権利保護措置を講じた比率は76.4%で、前年比2.5ポイント上昇し、企業の専利権者の専利侵害への対応は一層主体的になっている。中国の専利侵害訴訟事件で法院による賠償判断、法院による調停、裁判外の和解の金額が100万元以上であった比率は16.3%で、前年比9.0ポイント上昇した。

  (出典:中国国家知識産権局政務WeChat)

 
 
注目判決

 
双飛人製薬股份有限公司と広州頼特斯商務諮詢有限公司らの商標権侵害および不正競争紛争事件

 

  事件の経緯:

  双飛人製薬股份有限公司(以下、「双飛人公司」)は、登録商標「双飛人」の権利者であり、当該商標の指定商品は第3類のフロリダウォーターや化粧品などである。また、双飛人公司はハッカ水製品を指定商品とする2つの双飛人立体商標の権利者でもある。仏HARIBO Ricqles Zan社は、指定商品が第3類商品である登録商標「利佳」を保有しており、広州頼特斯商務諮詢有限公司(以下、「頼特斯公司」)が中国国内の宣伝、プロモーション、小売、販売を一手に引き受けていた。双飛人公司は、頼特斯公司らが利佳ハッカ水を生産、販売することで自社の登録商標の専用権を侵害し、またさらに不正競争行為を実施しているとして、人民法院に訴訟を提起した。一審法院は次のように判断した。利佳ハッカ水と「双飛人」商標の指定商品である「双飛人爽水」は同一商品に属す。比較したところ、権利侵害被疑商品の包装と双飛人公司の立体商標の構成は類似しており、また関連公衆に誤認、混同を生じさせる可能性があり、頼特斯公司は双飛人公司の立体商標権を侵害している。また、頼特斯公司は営利目的を実現するために、商品の宣伝において自社商品が「双飛人」商品(双飛人薬水)であることを強調しており、これは「双飛人」文字商標の権利侵害にあたる。このほか、利佳ハッカ水の包装・装飾と双飛人公司の周知商品の包装・装飾は類似しており、頼特斯公司の行為は不正競争にあたる。頼特斯公司らはこれを不服として控訴を提起したが、二審法院は控訴を棄却し、原判決を維持した。頼特斯公司は最高人民法院に再審を請求した。最高人民法院は再審で次のように判断した。頼特斯公司が提出した証拠は、仏HARIBO Ricqles Zan社が1990年代から中国本土の一部地域の新聞に「双飛人薬水」広告を掲載していたこと、掲載期間が比較的長く、発行地域および発行量も比較的多いことを証明でき、また仏HARIBO Ricqles Zan社が先に使用していた「双飛人薬水」に用いられている「青、白、赤」の包装に一定の影響力があったことを証明できる。双飛人公司は「双飛人薬水」が市場に存在することを明らかに知りながら、悪意をもって「双飛人薬水」の包装と類似した立体商標の登録を出願し、また権利を行使し、その行為は正当とは言い難く、頼特斯公司の先使用の抗弁は成立する。頼特斯公司の行為が登録商標専用権の侵害および不正競争にあたるとする双飛人公司の主張はいずれも成立しない。最高人民法院は一審、二審の判決を破棄し、双飛人公司の訴訟請求を棄却した。

  典型事例の意義:

  本件は商標の先使用の抗弁の審査問題にかかわる。先使用の抗弁制度の目的は、善意の先使用権者が元の範囲内で継続して自身の一定の影響力がある商業表示を使用する利益を保護することであり、信義誠実の原則の商標法領域における重要な体現である。今回の再審判決は誠実経営がもたらす権利・利益を効果的に保護し、人民法院が知的財産権訴訟の誠実・信用体系の構築を強化した有益な模索であった。

  (事件出典:中華人民共和国最高人民法院)

 
 
嘉興市中華化工有限責任公司、上海欣晨新技術有限公司と王龍集団有限公司らのノウハウ侵害紛争事件

 

  事件の概要:

  嘉興市中華化工有限責任公司(以下、「嘉興中華化工公司」)、上海欣晨新技術有限公司は、グリオキシル酸法によるバニリン合成プロセスのノウハウを保有する。嘉興中華化工公司は当該プロセスで一躍して世界最大のバニリンメーカーとなり、世界市場の約60%のシェアを占めた。王龍集団有限公司(以下、「王龍集団公司」)およびその法定代表者らは、嘉興中華化工公司のバニリン製造工程の副主任を通じて当該ノウハウを不当に取得し、かつ当該ノウハウのプロセスを使用してバニリン製品を大量に製造し、バニリン製品の価格の下落、嘉興中華化工公司の市場シェアの縮小を引き起こした。嘉興中華化工公司らは人民法院に訴訟を提起した。一審法院は王龍集団公司らの行為が一部のノウハウの侵害にあたることを認め、王龍集団公司らに侵害行為の停止、経済的損失350万元の賠償を命じる判決を下すとともに、行為保全の裁定を下し、本件に係るノウハウの侵害を直ちに停止するよう命じた。一審の判決後も王龍集団公司は権利侵害行為を続けた。双方の当事者は控訴を提起した。二審の最高人民法院は次のように判断した。王龍集団公司はその法定代表者が権利侵害のために設立した企業であり、かつその法定代表者は積極的に権利侵害行為に関与しており、ゆえに王龍集団公司とその法定代表者の行為は全部のノウハウの共同侵害にあたり、連帯賠償責任を負わなければならない。権利者が提供した経済的損失のデータをもとに、本件に係るノウハウの商業価値が大きいこと、権利侵害の情状が卑劣であること、被告が人民法院の行為保全の裁定の執行を拒否していることなどを総合的に考慮し、破棄自判して王龍集団公司とその法定代表者らに1億5,900万元を連帯して賠償するよう命じた。

  典型事例の意義:

  本件は人民法院の歴史上、有効判決で確定した賠償金額が最も高額であった営業秘密侵害事件である。本件の裁判は権利侵害による違反に伴う代償を増大させ、重要産業の中核技術を確実に保護しており、ノウハウ侵害事件における損害賠償の認定に対して参考となる意義を有する。

  (事件出典:中華人民共和国最高人民法院)

 
 
「施耐徳」商標権侵害紛争事件

 

  事件の概要:

  施耐徳電気(中国)有限公司(以下、「施耐徳中国公司」)は、権限付与を経て第9類「スイッチ、ブレーカー、リレー」などの商品において、第G715396号などの5つの「Schneider」、「施耐徳」の中国語・外国語商標の使用権を有しており、また民事訴訟を提起する権利を有する。2013年1月、施耐徳中国公司は杭州市下城区人民法院に訴訟を提起し、杭州東恒電器有限公司(以下、「東恒公司」)の前身である「杭州施耐徳電器有限公司」が第G715396号の商標権を侵害していると主張した。人民法院による調停を経て、東恒公司は第G715396号商標権の侵害を停止し、社名を変更し、施耐徳中国公司に経済的損失および合理的費用の計10万元を賠償すべきであることが確認された。

  事件調停後、東恒公司はウェブサイトのリニューアルと社名変更を行ったが、その後再びウェブサイトのトップページ、テキストタイトル、製品価格表、製品リンクなどに、「施耐徳」商標を継続して大量に使用した。またさらに、北京奇志浩天科技有限公司(以下、「奇志浩天公司」)が運営する「中国サプライヤーネットワーク」に東恒公司の商品を掲載し、そのうち201件に「施耐徳」商標の商品リンクが含まれており、紹介文でも大量に「Schneider/施耐徳」の中国語・外国語商標を使用していた。上述の行為は2019年まで続いた。施耐徳中国公司は再び訴訟を提起し、東恒公司に損失300万元の賠償を、奇志浩天公司には1万元の範囲内で連帯して責任を負うことを要求した。

  一審は次のように判断した。東恒公司の本件に係る行為は、同種または類似商品上に施耐徳中国公司商標と同一または類似の商標表示を使用し、関連公衆に商品の製造元について容易に混同を生じさせ、施耐徳中国公司が本件に係る商標に対して享有する権利の侵害にあたり、損害賠償の法的責任を負わなければならない。奇志浩天公司は情報発信プラットフォームとしてすでに合理的な注意義務を果たしており、また権利侵害となるリンクをすみやかに削除しており、権利侵害責任を負う必要はない。東恒公司が賠償すべき具体的金額に関しては、本件に係る商標の知名度、被疑行為が反復的な権利侵害であること、主観的悪意が明らかであり、かつ継続期間が比較的長いことなどを総合的に考慮し、東恒公司には施耐徳中国公司に経済的損失300万元を賠償するよう命じる判決を下した。当該事件の一審判決はすでに発効している。

  典型事例の意義:

  本件は懲罰的要素を十分に考慮し、上限から法定賠償金額を確定した典型事例である。本件は懲罰的損害賠償が適用される法定要件を満たしていたものの、懲罰的損害賠償の基準の確定が困難であったため、人民法院は懲罰的要素を十分に考慮して上限から法定賠償金額を確定し、原告が主張する賠償金額300万元を全額支持した。本件の裁判は、重大な権利侵害行為に対する処罰の強化、知的財産権の厳格な保護という要求の貫徹・実行を十分に体現しており、市場化、法治化、国際化された商環境の整備に資するものである。

  (事件出典:北京市高級人民法院)

 
 
集佳の最新動向

 
集佳が代理人を務めた33件の専利が第23回中国専利賞を受賞 何年も連続で代理機関ランキングのトップに

 

  2022年7月26日、中国国家知識産権局は「第23回中国専利賞授与に関する決定」を発表し、イノベーションの実施や経済・社会発展の推進などにおける貢献が顕著である専利権者、発明者(考案者・創作者)および関連する組織関係者を表彰した。今回の中国専利賞の選考では、集佳知識産権代理の案件が再び優れた業績を収め、計33件の特許が中国専利賞を受賞した。内訳は、中国専利金賞が1件、中国専利銀賞が1件、中国専利優秀賞が31件である。これまで、集佳が代理人を務めた累計200件近くの専利が中国専利賞を受賞しており、何年も連続で全国代理機関ランキングのトップを走っている。

  ニュースリンク:http://www.unitalen.com.cn/html/report/22074398-1.htm

 
 
集佳律師事務所「2020-2021中国優秀知的財産権代理機関ランキング」に選出

 

  先ごろ、「2020-2021中国優秀知的財産権代理機関ランキング」が正式に発表され、北京市集佳法律事務所は長年にわたる知的財産権分野での優れた業績と難事件を処理する傑出した能力により、400あまりの知的財産権代理機関の中から頭角を現し、「中国優秀知的財産権代理機関商標行政ランキングTOP10」に選出された。

  このほか、「2020-2021中国知的財産権サービス機関優秀代理ランキングTOP50」もある。集佳知識産権は、安定した総合力、卓越した専門サービス、優れた業績により、業界で広く認められており、「2020-2021中国知的財産権サービス機関優秀代理ランキングTOP50」にも選出された。

 
 
集佳がMIP「IP STARS 2022」で多くのランキングに選出

 

  先ごろ、世界的に有名な知的財産権メディア「Managing Intellectual Property」(MIP)が選考する「IP STARS 2022」の各ランキングが相次いで発表され、集佳知識産権はIP STARSの「特許訴訟」、「特許出願」、「商標訴訟」、 「商標出願」、「著作権業務」の5つの分野の推薦ランキングに選出された。

  また、MIPグローバル知的財産権個人賞の選考結果もすでに発表されており、李徳山弁護士、孫長龍弁護士、侯玉静弁護士、武樹辰弁護士が各自の分野での傑出した成果と高い影響力によりMIP 2022 IP Starsに選出され、侯玉静弁護士は「Top 250 Women in IP 2022」にも併せて選出されている。

 
 
集佳が8年連続で「IAM Patent 1000」に選出

 

  先ごろ、世界的に権威ある知的財産権メディア「Intellectual Asset Management」(IAM)が2022年度「IAM Patent 1000」の選考結果を発表し、集佳は8年連続で「特許権利化」と「特許訴訟」の2つの分野で推薦する事務所に選出された。また、集佳の3名の特許代理人が優れた業績を理由に傑出した個人に選出され、李徳山弁護士が「特許訴訟」と「特許権利付与・権利確定」の2つの分野で、李洋特許代理人長と潘煒弁護士が「特許権利付与・権利確定」の分野で傑出した人物として選出された。

 
 
集佳の視点

 
手順の一部と方法全体との一体不可分な関係による 複数主体方法特許権侵害の判断をめぐる問題の解決(三の一)

 

手順の一部と方法全体との一体不可分な関係による
複数主体方法特許権侵害の判断をめぐる問題の解決(三の一)

  北京集佳知識産権代理有限公司 パートナー弁理士 王宝筠

  要旨

  本稿で議論する複数主体方法特許とは、方法特許のクレームに異なる実施主体の実施する複数の動作が存在することをいう。複数主体方法特許は特許権侵害の判断において困難に直面することが多い。被疑侵害主体は、複数主体方法特許のクレームにおける手順の一部を実施したのみであり、方法におけるすべての手順を実施したわけではないことから、特許権侵害の判断における文言侵害原則の要件を満たしておらず、その行為は方法特許の使用による侵害行為を構成しない旨を主張することが多い。

  複数主体方法特許をめぐる上述の侵害判断の難しさについては、特許権の間接侵害を用いて特許権侵害の判断を行うべきとの見解があるが、特許権の間接侵害は理論、実務のいずれにおいても、必ずしも複数主体方法特許権侵害の判断をめぐる難題を解決する上での効果的な方法ではない[1]。

  本稿では、複数主体方法特許権侵害の判断をめぐる問題を検討するにあたって間接侵害、共同侵害の考え方は取り入れず、方法における手順の一部と方法全体との関係に基づいて、複数主体方法特許権侵害の判断における考え方の筋道を立てることとする。

  本稿の見解は次のとおりである。方法の使用において、方法は全体として「使用」の対象となる。使用者が方法全体の手順の一部のみを使用し、当該手順の一部が方法全体における一体不可分な一部である状況において、使用者による手順の一部の使用はすなわち方法全体の使用となる。これは使用者が製品の使用にあたって、製品全体における一体不可分な部品の一部のみを使用した場合に同様に製品全体の使用を構成するのと、理屈は同じである。本稿ではさらに、「方法の使用」と「方法の実現」を区別するべきと考える。「方法の実現」は(製造)方法の獲得であり、方法における手順を運用させる形、または運用状態が維持させる形で現れる。方法の使用は方法を実現した後に、すでに実現している方法に対して行う使用であり、製品の使用が製造済みの製品に対する使用であることに類似する。そのため、使用対象としての方法全体における各手順はそれ自体が運用状態にあり、単一主体が方法全体における手順の一部のみを使用したとしても、方法全体におけるその他の手順は当該主体に使用されていないからといって運用されていない状態になることはなく、単一主体が方法全体の手順の一部のみを使用した場合に方法全体の使用を実現できないという問題が生じることもない。考えられる疑問を解消するために、本稿ではさらに「方法の使用」における「使用」の実現方式について解説を行う。

  以下では、本稿の見解について解説を行う。

  一.「方法の使用」における基本的な問題

  1.「方法の使用」における「使用」は方法における動作そのものではない

  「方法の使用」において、「使用」は方法特許権が直接的に現れたものであり、「方法」は「使用」の対象であり、特許権が対象とする技術客体である。これに基づくと、「方法の使用」において、「方法」そのものが内包する動作は「方法の使用」における「使用」ではなく、「使用」と「方法」自体が内包する動作とを混同するべきではない。

  2.「方法」自体が「動的」なもの

  方法自体が運動状態にあることは言うまでもない。静的な製品と比べ、方法は動的な手順および手順間の実施順序関係から構成される。「方法の使用」に落とし込むと、方法を運用させることを「方法の使用」の実現方式とすることはできない。その理由は、こうした実現方式は実際には方法自体が運動状態にあるという根本的な属性を否定することになるからである。

  上述の結論は本稿の後続の分析につながる。

  二.方法は全体として使用される

  「使用」の意味は、人または物などを何らかの目的のために役立てることである[2]。使用対象としての「人または物」は、「使用」において全体として現れる。本稿では、「使用」が存在するか否かを確定するにあたり、使用対象の各構成部分について個別に使用が存在するか否かではなく、使用対象という全体について使用が存在するか否かを分析するべきであると考える。

  対象全体をその構成する各部分に分解し、さらにはそれら構成部分にその使用がそれぞれ存在するか否かを個別に分析する。これは実際には各構成部分によって「使用」の新たな対象が形成され、こうした新たな対象によって、これら構成部分のそれぞれの使用を検討するということである。こうした複数の部分に対する複数の使用によって形成されるのは対象全体における各構成部分に対するそれぞれの使用からなる使用の集合であり、対象全体に対する使用ではない。「集合の使用」を対象全体の使用と混同すれば、対象全体の使用の成立条件を誤って引き上げるだけである。

  使用対象を全体としてその使用を検討するとは、「製品の使用」を考えると理解しやすい。

  例えば、灯火装置、アクセル、ブレーキ、ワイパーを有する自動車の場合、この自動車を使用するというのは、自動車という全体に対する使用である。こうした使用は自動車の運転過程においてアクセル、ブレーキを使用することや灯火装置、ワイパーを起動することでもよければ、もちろん、運転過程において灯火装置やワイパーのみを使用することでもよく、ひいてはこうした車両を運転するのみで、ワイパーや灯火装置を起動しない場合も、当該自動車の使用となる。上述の自動車の使用において、自動車は全体として現れ、考慮される使用は自動車という全体に使用が存在するか否かであり、「使用」が当該自動車の各構成部分に作用し、それによりこれら構成部分が個別に「役立つ」働きを果たすことは要求されない。

  あるいは、「使用」と使用の対象としての「製品または方法」との関係を次のように理解することができる。「使用」は「方法または製品」という対象全体に施すものであり、「使用」と「方法または製品」との間には作用点が存在する。この作用点は「方法または製品」の各構成部分であることもできれば、「方法または製品」の特定の部分であることもでき、これらはいずれも「使用」が「方法または製品」という対象全体の使用であることの成立に影響しない。

  「方法の使用」に戻ると、方法の使用の要件を満たすか否かを確定するにあたり、方法全体における各手順についてすべて使用されることを要求する必要はなく、特定の主体によって方法全体における手順の一部のみがその使用下において使用者のために役立つ働きを発揮したとしても、当該特許の方法全体の使用を構成することができる。これは製品における部品の一部のみが役立つ働きを発揮した場合に同様に「製品の使用」を構成することに類似する。手順の一部にのみ施した使用が方法全体の使用でもあることをどのようにして証明するのかというと、これは手順の一部が確かに方法全体の「一部」であることを証明する必要があり、これこそ実務において複数主体方法特許権侵害の判断を行う上での重点である。

  三.方法の全体性の分析

  製品は有形である。有形の製品において、製品の一部と製品全体との関係は一目瞭然である。そのため、製品の一部の部品の使用が製品全体の使用であると判断されやすい。

  方法は製品と異なり、無形である。こうした無形の特性によって方法の一部と方法全体との間には製品のような有形で、直観的な接続関係が欠けており、これにより特定の手順が方法全体に属することを直観的に観察することは難しい。しかし、それは方法における手順の一部が方法全体に帰属するという事実に影響することはない。ただ、この事実を実務において証明、明示することが求められる。

  手順の一部が方法全体に帰属するという結論を導く上で証明する必要があるのは、手順の一部と方法全体との間に一体不可分な関係が存在するという点である。このような関係が存在する場合、それが目に見えなくても、この手順の一部の使用はすなわち方法全体の使用である。これは製品における一体不可分な部品の一部を使用した場合に同様に製品全体の使用を構成するのと、同様の理屈である。

  「一部」と「全体」との一体不可分な関係を確定するには、一つの手がかりが必要となる。この手がかりは方法全体に由来するものであり、方法全体によって達成される有利な効果(「全体の有利な効果」という)をこの手がかりとして用いることができる。全体の有利な効果は方法全体に由来し、手順の一部と全体の有利な効果とが一体不可分であれば、当該手順の一部は方法全体と一体不可分である。

  操作レベルでは、特定の手順の一部が本発明の全体の有利な効果を達成するために特別に提起された手順であるか否かを判断することができる。ここでの「特別に」とは、当該手順の一部がこの全体の有利な効果を達成するために専門に提起されたものであることをいい、このような「特別」が存在するからこそ、手順の一部と全体の有利な効果との間に一体不可分な関係が形成される。また、方法の全体の有利な効果は方法全体における各手順が相互に連携して達成されるものであることから、手順の一部と全体の有利な効果とが一体不可分であるとき、当該手順の一部とその他の各手順、すなわち方法全体との間にも一体不可分な関係が存在する。

  上述の分析過程は、実際には有利な効果を手がかりとして、方法における手順の一部と方法全体との一体不可分な関係を明らかにしたものである。明らかにしたこのような一体不可分な関係は、製品における各部品の接続関係に類似する。ただ、製品における接続関係は有形で目に見えるが、方法における上述の一体不可分な関係は無形で目に見えない。

  手順の一部が方法の全体の有利な効果を達成するために「特別に」提起されたものであることをどのように証明するかというと、主には手順の一部と全体の有利な効果とが唯一の対応関係であるか否かを確定しなければならない。いわゆる「唯一」の対応とは、2つの面から分析することができる。

  第一に、特定の手順の一部がその他の方法においても運用することができ、それによりその他の方法のために対応する有利な効果を達成することができるか否かを分析する。結論が「できる」であれば、つまりその手順の一部も本発明の方法から「分割」し、ほかの方法の有利な効果の達成に用いることができるということであり、その手順の一部と本発明の全体の有利な効果とは一体不可分な関係ではなくなる。

  第二に、その手順の一部そのものがそれ自体の有利な効果も達成することができるか否かを分析する。結論が「できる」であれば、その手順の一部はそれ自体の有利な効果と本発明の全体の効果の両方に対応し、本発明の全体の有利な効果に必ずしも唯一対応するわけではなくなり、よって、それと本発明の全体の有利な効果とは一体不可分な関係ではないことになる。

  それに関連して、実務においては次のことを避けなければならない。本発明の手順の一部が本発明の有利な効果の達成に対して貢献がありさえすれば、有利な効果と一体不可分な関係を有するという考え方は、確実に誤っており、かつ問題がある。

  手順の一部と全体の有利な効果との一体不可分な関係において、手順の一部が「本発明」の全体の有利な効果を達成するために「特別に」提起されたものであるということを強調する点に誤りがある。ここでの「特別に」とは「専門に」に類似する。このような「特別」、「専門」が存在しない、すなわち、その手順の一部とほかの方法との間にも論理的なつながりが存在する場合は、当該手順の一部と「本発明」との間に一体不可分な関係が存在するということはできず、両者の間には論理的なつながりのみが存在する。

  上述の「誤り」から生じる「問題」は明白である。手順の一部が本発明の有利な効果を達成するためにのみ用いられる(専門に用いられるわけではない)場合、その手順の一部と方法全体との間には一体不可分な関係があると考えられ、そうすると、次のような状況が生じる可能性がある。使用者の「使用」する手順の一部がその他の方法における手順でもあり、本発明における特有のものではない場合において、この手順の一部の使用が本発明の方法全体の使用でもあることが確定したならば、公衆の利益または他人の利益(その他の方法に対応して)まで、誤って特許権者の帰属とされる可能性が高い。

  以上をまとめると、手順の一部が本発明の全体の有利な効果に「唯一」対応するか否かによって、手順の一部と方法全体との一体不可分な関係の判断を行うことができる。

  注釈

  [1]特許権の間接侵害は通常、権利侵害の幇助、教唆の形で現れ、これによりその適用範囲が限定されたものとなる。しかも、特許権の間接侵害の成立は直接侵害の存在を前提としなければならず、その根本的な要件によって特許権の間接侵害はなおも特許権直接侵害の判断をめぐる問題を避けることができない。さらに、中国の司法実務を見ると、特許権の間接侵害を構成すると判断するには、「専用品」などの特別な条件といった要件を満たさなければならない場合が多く、これにより権利侵害の判断における難度が高まっている。

  [2]『現代漢語詞典(第7版)』北京、商務印書館、p.1190